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社会福祉法人 鉄道身障者福祉協会
第56回 鉄道90年記念奨励賞

懸賞作品入選者発表

課題【もっと、共生社会を】

第一位(賞金15万円)小松崎  有 美
第二位(賞金7万円)鈴 木   みのり
第三位(賞金5万円)石 黒   麻祐子
第三位(賞金5万円)稲 森   彩 子
佳 作横 田   真 司
佳 作堀 内   祐 奈


懸賞作品選評

選考委員長 小陳 勇一(朝日新聞社 論説副主幹)

 今回の課題は「もっと、共生社会を」。よりよい共生社会を身の回りで築いていくには、どんな視点が大切なのか。そんなことを考えさせられる作品が並んだ。
 第一位は、小松崎有美さんの「心のバリアフリー」。筋ジストロフィーの従弟との交流を通じ、共生についての自身の考え方がどう変わってきたのかを丁寧に描いた。
 「これまでは、どういうことをすれば障害者の環境が楽になるかを考えてきた」。しかし「本人が一番欲しかったのは、自分の存在を、自分の人生を、そして自分の生き方を心の底から理解し、認めてくれる他者だった」。この「心のバリアフリー」こそが必要だという考えに共感が集まり、選者からは「共生の本質とは何かを考えさせられた」「メッセージが明確」といった評価が寄せられた。
 第二位は、鈴木みのりさんの「僕らはみんなで、生きている」。生まれながらの障害者である筆者は、「私の抱くような苦しみとは無縁の人間だと思っていた」幼なじみと再会する。彼女からつらい告白を聞き、「健常であればこその生きる苦しみもあるのだ」と知る。
 「世の中は、いじめ・差別・様々なハラスメント等が止まない。違いがあって、異なる者同士で成り立っている世界なのに」。「共生社会」という言葉は使っていないが、そこに示されているのは、共生社会の原点につながる問題意識だ。
 第三位は2作品。石黒麻祐子さんの「まずは一対一から、共生を」は、決して読みやすい文章ではない。しかし筆者の伝えたいという思いがあふれている。「生きやすくなるためには、分かり合おうとすることは大切だ。ただ、『わかった気にならない』ことも同時に意識したい」。障害を抱える当事者だからこそ言える言葉だろう。
 対照的に、稲森彩子さんの「手話の技術。それよりも…。」は、自分の経験を読みやすくまとめた。手話はコミュニケーションの手段に過ぎず、「大切なのは伝えようとする心」だというメッセージもシンプルだ。筆者は大学生。同世代の若い人たちに読んでもらい、共生の未来について考える素材にしてほしい、との声が出た。
 佳作にも2作品が選ばれた。横田真司さんの「一緒にいい歳とりましょう」には、知的障害者4人が暮らすグループホームの世話人の日常が淡々と描かれている。驚くようなエピソードや強い主張はない。ただ、日々の小さな営みの積み重ねの先にこそ、共生社会は存在するのだと感じさせる。そして読む人の心を温かくする。
 「魔法使いの住む社会」を書いた堀内祐奈さんは、高校三年の時に睡眠障害にかかった。学校に通えずに疎外感を抱くが、病気の当事者会に入って活動することで変わっていく。強い立場の多数派に属している誰もが、ちょっとしたことで弱い少数派になりうる。その時どうしますか。そんな問いを投げかけられたように感じた。



第56回 鉄道90年記念奨励賞 第1位入選作品